採用難や人材不足が深刻化している昨今、ご縁があって雇い入れることになった従業員は大切な資産です。

そんな従業員に安心して働いていただくために欠かせない手続きを書類の入手方法から書き方、提出先まで、わかりやすくご紹介いたします。

今回は 労災保険と雇用保険の加入手続き です。

労災保険と雇用保険は、あわせて 労働保険 と呼ばれます。

労災保険は従業員の安全に、雇用保険は生活の安定に関わる大切な保険です。

まずは、労働条件を確認しましょう

通常は労災保険、雇用保険をセットで加入することが多いのですが、働く期間や時間によって、加入する保険が異なります。

まずは雇用契約の内容を確認しましょう。

週20時間未満の勤務または、31日以上継続して雇う見込みがない労災保険のみ加入
週20時間以上の勤務かつ31日以上継続して雇う見込みがある※労災保険、雇用保険の両方に加入

※31日以上とは、休日なども含めた契約の期間です

例えば、1日8時間(休憩除く)、週5日勤務する正社員1名を採用した場合は、週の見込み労働時間が40時間なので、労災保険と雇用保険に加入します。

一方、1日6時間(休憩除く)、週3日勤務するパートタイマー1名を採用した場合は、週の見込み労働時間が18時間なので、労災保険のみの加入となります。

労災保険、雇用保険は、加入の条件が異なりますが、同時に加入するケースが多いかと思います。

雇用保険に加入するには、労災保険の加入が必要です。

よって、労災保険、雇用保険、同時に加入する場合には、①労災保険の加入手続き⇒②雇用保険の加入手続きの流れて進めてください。

労災保険とは

労災保険は簡単に言うと従業員の業務上・通勤上のケガや病気に対して補償が受けられる保険制度で、以下のような特徴があります。

  • ・保険料は全額事業主負担
    ・業種によって保険料率が変動
    ・労働者であれば正社員、アルバイト、パートを問わず対象

この労災保険が制度化される前は、仕事に起因する事故や病気は、事業主が補償をするものとされていましたが、治療費や生活費、万一亡くなってしまった場合の遺族への補償は多額になるケースが多く、事業主の負担は多大なものとなってしました。

そこで、事業主みんなで保険料を出し合い、政府が主体となって運営される労働者災害補償保険(労災保険)がつくられました。

労働保険の保険料の料率と計算方法について

労働保険の加入の前に気になるのが、いくらの保険料が発生することになるのかではないかと思います。

ここでは、労災保険料、雇用保険料それぞれの計算方法について説明します。

労災保険と雇用保険の保険料(以下、労働保険料)は、保険加入時にその年度分を前払いをします。

この前払い額は、労災保険の加入日つまり従業員を雇い入れた日から、その年度末(~3/31まで)に発生することが見込まれる従業員の賃金額に「労災保険料率」と「雇用保険料率」をかけることで計算します。

労災保険料は、全額が事業主の負担となりますが、雇用保険料は、労働者負担と事業主負担に分けられます。

労働者の雇用保険料の負担は、賃金に対して3/1000または4/1000となり、雇用保険料の労働者負担部分は、給与から天引きすることにより労働者に負担してもらうことになります。

  • ①労災保険料=労災保険の加入日から年度末(3月31日)までの労災保険の対象となる従業員の見込みの賃金総額×労災保険料率(業種によって2.5~60/1,000)⇒全額事業主負担
  • ②雇用保険料=雇用保険の加入日から年度末(3月31日)までの雇用保険の対象となる従業員の見込み賃金総額×雇用保険料率(業種によって9~12/1,000)⇒6~8/1000が事業主負担

  • ①労災保険料+②雇用保険料=③労働保険料‥納める労働保険料

書類作成時点では、年度末までの賃金は確定していないため、概算金額で労災保険料を計算します。

従業員の賃金額には、通勤手当、住宅手当、家族手当なども含みます。

仮に、一般のサービス業で年間500万円の労災保険、雇用保険の対象となる賃金の支給見込みの場合、労働保険料、雇用保険料の計算は以下のようになります。

①労災保険料:500万円×3/1000=15,000円
②雇用保険料:500万円×9/1000=45,000円
③労働保険料:①労災保険料15,000円+②雇用保険料45,000=60,000円

以上のように国に納める労働保険料は60,000円となります。

但し、②雇用保険料の内、3/1,000の15,000円は、労働者から徴収するため、事業主の実質的な労働保険料の負担金額は、③労働保険料総額60,000円から労働者負担分15,000円を差し引いた45,000円となります。

 

業種ごとの労災保険料の料率一覧

労災保険料率は、業種によって異なります。

なぜなら、業種によって、業務を行う上でのケガ、病気のリスクは異なるからです。

労災保険の料率は、一番高い業種は漁業で60/1000、一番低い業種は電気機器製品製造業及び計量器、光学機械、時計等製造業で2.5/1,000となっています。

その差は、なんと24倍にもなっています。

平成31年度の業種ごとの労災保険料は、以下のようになっています。

料率の単位は1/1000です。

業種料率
林業60
海面漁業18
定置網漁業又は海面魚類養殖業38
金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業88
石炭石鉱業16
石油又は天然ガス鉱業2.5
採石業49
その他の鉱業26
水力発電施設、ずい堂等新設事業62
道路新設事業11
舗装工事業9
鉄道又は軌道新設事業9
建築事業9.5
既設建築物設備工事業12
機械装置の組み立て又は据付けの事業6.5
その他の建設事業15
食品製造業6
繊維工業又は繊維製品製造業4
木材又は既製品製造業14
パルプ又は紙製造業6.5
印刷又は製本業3.5
化学工業4.5
ガラス又はセメント製造業6
陶磁器製品製造業18
その他窯業又は土石製品製造業26
金蔵精錬業6.5
非鉄金属精錬業7
金属材料品製造業5.5
鋳物業16
金属製品製造業又は金属加工業10
洋食器、刃物、手工具又は一般金物製造業6.5
めつき業7
機械器具製造業5
電気機械器具製造業2.5
輸送用機械器具製造業4
船舶製造又は修理業23
計量器、光学機械、時計等製造業2.5
貴金属製品、装身具、皮革製品等製造業3.5
その他の製造業6.5
交通運輸事業4
貨物取扱事業9
港湾貨物取扱事業9
港湾荷役業13
電気、ガス、水道又は熱供給の事業3
船舶所有者の事業47
農業又は海面漁業以外の漁業13
清掃、火葬又はと畜の事業13
ビルメンテナンス業5.5
倉庫業、警備業、消毒又は害虫駆除の事業又はゴルフ場の事業6.5
通信業、放送業、新聞業又は出版業2.5
卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業3
金融業、保険業又は不動産業2.5
その他各種事業3

一般のサービス業は、一番下の3/1000に該当します。

業種ごとの雇用保険料率と事業主負担、労働者負担について

雇用保険の料率は、労災保険料率と異なり、業種ごとの細かい違いはなく、「一般の事業」、「農林水産・清酒製造の事業」、「建設の事業」の3つに分かれているのみです。

ただし、雇用保険料は、労働者負担と事業主負担の2つに分かれています。

「一般の事業」、「農林水産・清酒製造の事業」、「建設の事業」の3つ業種ごとの雇用保険料の料率、労働者負担と事業主負担は以下の表のようになっています。

事業の種類・負担者雇用保険料率
労働者負担+事業主負担
労働者負担事業主負担
一般の事業9/1,0003/1,0006/1,000
農林水産・清酒製造の事業11/1,0004/1,0007/1,000
建設の事業12/1,0004/1,0008/1,000

 

支払は、銀行、郵便局、信用金庫の本店・支店、労働局、労働基準監督署が受け付けています。

最初のお支払いにはご利用いただけませんが、次回からは口座振替も可能ですので、お申込みされてみてはいかがでしょうか。

口座振替用紙は、保険加入の窓口である労働基準監督署・労働局でもらえるほか、ダウンロードも可能です。

 

労災保険に加入する人、加入できない人

労災保険の加入は、原則として従業員を雇い入れた日から10日以内に手続きを行うものとされています。

ここでいう従業員とは、正社員、パートなどの区別を問わず、すべての労働者をいいます。

ただし、法人の役員や、事業主の同居の親族など、管理的な立場にある方は原則として労災保険の対象外となります。

事業主も労災保険の対象外です。

労災保険の対象外である事業主や、役員、親族の方でも、労災保険に加入できる特別加入という制度もありますので、

そちらは別の機会にご紹介いたします。

労災保険手続きの流れ

1)「労働保険 保険関係成立届」と「労働保険 概算・増加概算・確定保険料 一般拠出金申告書」をハローワークまたは労度基準監督署で入手する。

※雇用保険の加入手続にも使用します。

『全国労働基準監督署の所在案内』をご参照ください。

2)「労働保険 保険関係成立届」と「労働保険 概算・増加概算・確定保険料 一般拠出金申告書」の書類を記入。
詳細は以下の記載例をご確認ください。

3)「労働保険保険関係成立届」と「労働保険概算・増加概算・確定保険料 一般拠出金 申告書」を記入し、事業所を管轄する労働基準監督署へ提出し、保険料を支払う。

※保険料は後日納付することもできます。

⇒提出すると「労働保険番号」が割り振られます。
この労働保険番号が記入された事業主控えは、雇用保険の加入手続きにも使用しますので、大切に保管してください。
※同じ日にハローワークで手続することも可能です。

4)書類の提出時に保険料を支払わなかった場合は、「領収済通知書」で、保険料を支払う。

銀行、郵便局、信用金庫の本店・支店、労働局、労働基準監督署でお支払いください。

労災保険加入の手続きは、以上で完了です。

以上(1)~(4)の手続きについてこれから一つ一つ説明してきます。

まず、労災保険や雇用保険に加入するための書類である「労働保険保険関係成立届」の書き方・記載方法についてサンプル記載例を用いて説明します。

労働保険関係設立届の書き方と記載例

労働保険保険関係成立届とは、労災保険や雇用保険に加入するための書類になります。

提出期限は、従業員雇い入れの翌日から10日以内となっています。

この労働保険保険関係成立届を提出することで、「労働保険番号」が割り振られた事業主控を入手することができます。

この「労働保険番号」は以下の雇用保険加入の手続きにも必要になりますので、大切に保管ください。

 

労働保険概算・増加概算・確定保険料一般拠出金申告書の書き方と記載例

「労働保険概算・増加概算・確定保険料 一般拠出金 申告書」は、労災保険や雇用保険の保険料の見込み額を支払うための書類になります。

提出期限は、雇い入れの翌日から50日以内と定められていますが、保険関係成立届と一緒に提出し、ゆとりをもって納付されることをお勧めします。

従業員雇入れの日から、その年度末までの見込みの賃金額から、労災保険料(雇用保険にも加入する場合は、雇用保険料も)を見込みで計算し、前払いで納付します。

 

雇用保険とはどんな制度か

 

雇用保険とは、労働者の方の雇用の安定、就職サポート、失業した場合の生活安定、教育訓練を含めた能力開発サポート及び失業の予防、雇用機会の拡大のために作られた制度です。

雇用保険には以下のような特徴があります。

  • 従業員が失業した時に給付が受けられる
  • 育児、介護による休業、高齢になって賃金額が下がった時に給付が受けられる
  • 「農林水産、清酒製造の事業」と「建設の事業」「その他の事業」で保険料率が異なる
  • 保険料は事業主と労働者それぞれが負担

 

雇用保険で最も有名なのが「失業給付」ではないでしょうか。

一般的に失業給付と言われている給付は、正しくは「失業等給付」の中の「求職者給付」、さらにその中の「基本手当」に該当します。

この「基本手当」は、雇用保険に加入している従業員が、倒産、契約期間の終了といった理由で失業してしまったとき、生活が不安定にならないように支給される給付金です。

失業給付のような従業員の生活保障としての給付金のほか、育児のために休職されるとき、介護のために休職されるときに受給できる給付金や、定年後嘱託職員などになった高齢者の方に対する賃金助成など、従業員に長く勤めていただく上で役に立つ制度があります。

 

雇用保険の加入時期と加入条件について

雇用保険の加入も、原則として従業員を雇い入れた日から10日以内に手続きを行うものとされています。

ここでいう従業員は、雇用保険の加入対象となる従業員つまり、週20時間以上かつ、31日以上勤務する見込みのある方になります。

また、労災保険と同じく、事業主、法人の役員や事業主の同居の親族は、原則として雇用保険の加入対象外となります。

 

雇用保険手続きの流れと順序

※雇用保険の手続きをされる前に、まずは、労災保険の加入に関する上記でご説明した「労働保険 保険関係成立届」を労働基準監督署に届出してください。

1)「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークまたはインターネットで入手。

インターネットで用紙をダウンロードする場合は、『ハローワークインターネットサービス』にアクセスし、印刷したい書類の名称をクリック。

「個人情報の取り扱い及び利用上の注意」を確認・同意の上、ダウンロードしてください。

2)「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」記入。

3)必要な添付書類を用意する。

雇用保険に加入時に必要な書類一覧

  1. ①「労働保険 保険関係成立届」の控え。
  2. 登記簿謄本(写)、事業許可証、工事契約書、不動産契約書といった、事業所の実在が確認できる書類。
    ※事業所の所在地が登記と異なる場合は、所在地が明記されている公共料金の請求書や賃貸借契約書などが必要になります。
  3. ②請求書や領収書などの、事業内容が確認できる書類。
  4. ③個人事業主は、事業主の世帯全員の住民票(写)、または事業主の運転免許証ウラとオモテの写し
  5. ④従業員の労働者名簿の写し
  6. ⑤従業員雇入れの日から、届出日までの出勤簿やタイムカードの写し
  7. ⑥従業員雇入れの日から、届出日までに支払われた賃金の台帳または明細
  8. ⑦従業員が有期契約者の場合は、雇用契約書

 

4)「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を添付書類と一緒に、事業所を管轄するハローワークへ提出。

事業主の控えと、従業員ご本人に渡す「雇用保険被保険者証」が交付され、手続きが完了です。

「雇用保険被保険者証」は、3種類の書類が一つになった状態で交付されます。切り離してお渡しください。

そのほかの2つの書類は、事業主が保管してください。

雇用保険適用事業所設置届の書き方と記載例

雇用保険適用事業所設置届(表)

 

雇用保険適用事業所設置届(裏)

雇用保険適用事業所設置届は、事業所が雇用保険に加入する時に必要となる書類で、従業員を雇い入れてから10日以内にハローワークへ提出する必要があります。

雇用保険 被保険者取得届の書き方と記載例

雇用保険被保険者資格取得届は、従業員を雇用保険に加入させるために必要となる書類です。

上記の雇用保険適用事業所設置届と同時に提出し、新たな雇用保険の対象となる従業員を雇い入れた場合には、雇い入れた月の翌月10日までにハローワークへ提出します。

 

労災保険の手続きをしない場合のペナルティ、罰則はどうなる?

労災保険の加入の手続きを怠っていると、ペナルティが発生します。

行政機関から指導を受けても手続きをしていなかった従業員が受けた保険給付の額の100%
従業員の雇い入れから1年以上手続きをしていなかった従業員が受けた保険給付の額の40%

労災事故では健康保険証が利用できませんので、通常3割負担の医療費を、10割負担することになります。

そう考えると、治療費だけでもかなりの金額を事業主が負担しなくてはなりません。

一方、雇用保険の加入忘れは、従業員が会社を離職し、失業給付を受けるためにハローワークへ相談に行った際に明らかになることが多いようです。

加入忘れがわかると、ハローワークから事業主へ連絡がきますので、遡って保険加入の手続きをすることになります。

労災保険も雇用保険も、遡って加入手続きをすると、遡った期間の保険料のほか、追徴金が発生することがあります。

労災保険、雇用保険どちらも従業員・事業主を支えてくれる大切な保険です。

いざという時に必要な給付が受けられない、といったことがないよう、忘れずに手続きをしましょう。

各種資料の作成方法が分からない、資料の入手、提出の時間が無いなど、雇用保険、労働保険の加入の手続きでお困りの際は、雇用保険、労働保険の一式のサポートを行っております。

お気軽にご相談ください。