製造原価は、高いとの低いのはどちらがいいでしょうか?

当然、製造原価は、低い方がいいと考えます。

なぜなら、製造原価を低くなれば、利益が大きくなるからです。

製造原価が低くなり、売上から売上原価を引いた粗利益が大きくなると資金繰りがその分良くなるのでしょうか?

…そうなるとは限りません。

一般的な全部原価計算により原価計算を行っている場合は、製造原価が下がり、

損益計算書上の利益が増えても、資金繰りが悪くなることがあります。

販売数量は同じで、在庫数量と完成品数量が異なるケース1とケース2でこのことを数値でご説明します。

それぞれ在庫と、完成品の数量に違いがあるとします。

計算が複雑になります。

細かいところとは、気にされないでください。

(ケース1)

   在庫数量 単位:個
20 期首在庫  販売製品数量⇒売上原価 60
    80 製品完成品数量⇒仕入  期末在庫数量  40
 100    100


(ケース2)

   在庫数量 単位:個
30 期首在庫  販売製品数量⇒売上原価 60
    50 製品完成品数量⇒仕入  期末在庫数量  20
 80    80

ケース1、ケース2の共通条件として、
販売数量60個で販売単価が20万円とします。
この場合の売上は20万円×60個=1,200万円です。

変動費は、材料費のみで一個あたり2万円、現金での仕入とします。

現金での発生で、固定費が製造間接費で300万円かかっているとします。
製造間接費の配賦は、製品数量で行う事とします。
計算をシンプルにするために仕掛品及び材料在庫はないとします。
固定費の金額はそれぞれ数量で配布します。

期首在庫の単価は、7万円とします。

ケース1、ケース2それぞれの場合、以下のような損益計算書となります。

損益計算書

 単位:万円  ケース1 ケース2 
売上   1,200 1,200
 売上原価   期首棚卸金額 140 210
 製造原価 460 400
   合計  600 610
 期末棚卸金額 230※1 160※2
売上原価合計  370 450
売上総利益 830 750

製造原価

 単位:万円  ケース1 ケース2  差 
変動費  160 100 60
固定費  300 300  -
 製造原価合計 460 400 60

在庫の計算は、先入先出法で行います。
固定費の金額はそれぞれ数量で配布するので、
期末棚卸金額は、ケース1、ケース2それぞれ以下のようになります。

ケース1
材料費:2万円×40個(期末在庫数量)=80万円
製造間接費:300万円(製造間接費)÷80個(完成品数量)×40個(期末在庫数量)=150万円
合計:80万円+150万円=230万円…※1
ケース1
材料費:2万円×20個(期末在庫数量)=40万円
製造間接費:300万円(製造間接費)÷50個(完成品数量)×20個(期末在庫数量)=120万円
合計:40万円+120万円=160万円…※2

ケース1の方がケース2の場合に比べて、80(830-750)万円売上総利益が大きくなっています。

一方、資金の増減はどうなるでしょうか?

資金増減

 単位:万円 ケース1  ケース2  差 
売上  1,200 1,200
仕入  △160
(2×80個) 
△100
 (2×50個)
60
固定費 △300 △300
資金の増減   740 800 60

資金の増減は、損益計算書とは逆で、ケース2の方がケース1に比べて資金が大きくなっています。

これは、仕入がケース2の方が30個分(ケース1完成品数量80-ケース2完成品数量50)多いため、

30個×2万円=60万円ケース1の方が支出が大きくなっているためです。

 単位:万円 ケース1  ケース2  差 
損益計算書の利益  830 750 △80
資金の増減  740 800  +60
損益計算書と資金のズレ  90 △50  

このように、全部原価計算によると、在庫が増えれば、利益が増えることがあります。

利益が増えても資金繰りは楽になりません。

実体のない利益が増えても、資金がなければ、経営を行うことはできません。

損益計算書の利益の増加を目指し、経営することは、資金の増減を見逃してしまいます。

このような弊害をなくすためには、内部管理用の原価計算方法を直接原価計算、スループット会計等へ変更する必要があります。

また、損益計算書、キャッシュフロー計算書、貸借対照表3つを眺め、利益と資金のズレを把握することはメーカーの場合、かなり難しくなります。

自社の方針にあった利益の増減=資金の増減となるよう会計をシンプルに設計する必要があります。

そのためには、資金別貸借対照表が有効です。

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